■ 医師逮捕、医療過誤は続く

Date: 2003-09-26 (Fri)

 東京慈恵会医科大付属青戸病院で、当時60歳だった男性患者が前立腺がんの摘出手術後に死亡した。この件を重く見た警視庁捜査1課と亀有署は25日、手術を担当した同病院泌尿器科の男性医師3人を業務上過失致死容疑で逮捕するとともに、同病院など関係先の捜索を始めた。

 逮捕されたのは男性の手術を担当した同病院泌尿器科の医師で、斑目旬(まだらめ・じゅん)(38)1990年東京慈恵会医科大卒業、長谷川太郎(34)1995年東京慈恵会医科大卒業、前田重孝(32)1997年東京慈恵会医科大卒業の3容疑者。また、捜査1課は、同大助教授で、事故当時は同病院泌尿器科に在籍していた男性医師(52)と麻酔医2人の計3人を、26日、同容疑で書類送検する方針だ。

 新聞報道によってその内容を検証すると、おぞましい実態が浮き彫りにされてくる。まず、この3人に腹腔鏡手術の経験がほとんどない、ということである。執刀医の斑目は助手として2回、他の2人は動物実験だけだ。しかも、事前に手術を許可する権限を持つ泌尿器科の診療部長が了承しているというのに呆れる。その上、この医師自身に腹腔鏡手術の経験がないのである。自分が経験したこともない手術の許可がどうして下ろせるのか。一般社会の常識では考えられない。しかも、無くしてしまったら取り返しのつかない「命」を預かるのである。

 この手術は元々、患者の主治医だった長谷川が「腹腔鏡手術をやってみたい。自分たちで研究したい」「自分たちだけでやって手術の問題点を明らかにしたい」と言ったことから始まった。この話を聞き最初に頭に浮かんだのが、遠藤周作氏の『海と毒薬』だ。

 この作品は戦争末期、米軍捕虜に対して九州の大学付属病院が生体解剖実験を行った事件を小説化したものだ。そこで語られるのも医者の不遜さと倫理観、「罪の意識」の不在である。

 今回の事件でも医師の一人は「自分で成功症例を挙げたかった」と供述している。それ以上に医者の不遜さを実感したのが、病院側の会見での落合和彦院長の言葉だろう。

 「難易度が高いものに挑戦するのは大学病院の使命」の一言だ。

 確かに挑戦は必要だろうが、それは幾重にも安全確認がなされた上で初めて語られるべきものである。エベレストに挑戦する時にアロハシャツで行かないのと同じことだ。こんな言葉の端々にも大学病院の医師の不遜さが垣間見える。

 今回の手術では、危なくなったら開腹手術に切り替えるようにと指示されていたらしい。執刀もマニュアルを見ながらの作業で、手術に立ち会った看護師が「もうやめてほしかった」と証言しているほどだ。止血に手間取った際、すぐに開腹手術に移行する必要があった。にも関わらず手術開始後、11時間半もたってから開腹手術を行っていたという。こうした事実を知っていても、会見で「難易度が高いものに挑戦するのは大学病院の使命」と言い放つ医師。医師自体を生み出す教育課程から考え直さなければ、こうした医療過誤以前の事故も絶えることはない。

 そして、こうした医師達がまた患者を診て手術を行うことができないよう、医師免許は即時に剥奪すべきだ。免許停止などでは手ぬるい。全ての医師は自分たちの仕事が単なる労働ではなく、人の命を預かる聖職であることをいま一度振り返るべきではないか。

 東京慈恵会医科大学付属病院のHPで「患者さま」と書かれてあることが、余計腹立たしさを増すのは僕だけではあるまい。

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